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スターム・ルガーGP-100【後編】分解と組立て他

この記事はスターム・ルガーGP-100【前編】のつづきです。

スターム・ルガーGP-100【前編】特徴と構造他
スターム・ルガーGP-100をご紹介します。 スターム・ルガーGP-100 1986年、ルガー・セキュリティー・シックス(1970~85年製造)に代わるニュー・モデルとして、スターム・ルガー社はGP100を市場に投入しました。 セキュリティー・シックスはスターム・ルガー社製品の中でも成功した信頼性の...

ワイヤーロック付属

gp100box

GP100はプラスチック・ガンケースに入れて販売されています。銃と一緒に太さ4mmのワイヤー・ロックが付属し、これは保管時にワイヤーを銃のフレーム(シリンダー・ハウジング)に通して使用します。ロックはトリガー・ガードに通しただけでは、弾の装填と射撃が可能なので意味がありません。

 

gp100lock

Photo via Sturm, Ruger & Co., Inc.

細いワイヤであればバレルの中を通すのもアリですが、バレル内やマズル・クラウンを傷つけることは避けたいので、その際は慎重になるべきでしょう。Gun Show などイベントでは、ナイロンの結束バンドで簡易的にバレル内を通したり、ハンマーとフレームを固定することは多々あります。

因みに、オート・ピストルの場合はマガジンを抜いてホールドオープンさせ、イジェクション・ポートからグリップ内を通して使用します。また、ライフルもイジェクション・ポートから通し、ボルトやブリーチの完全閉鎖を妨げるようにしてロックします。

 

 

使用弾薬と調達方法

gp100ammo1

GP100が発射できる弾薬は、以下の4種類です。

  • .357マグナム
  • .38スペシャル
  • .38スペシャル+P
  • .38スペシャル+P+

「+P」とは、通常よりパウダー(装薬)量が多く、発生するガス圧が高圧となる弾薬です。おおむね.38スペシャルが17,000psiの圧力を発生させるのに対して、+Pでは18,500psiの圧力が掛かります。表記方法は、「+(プラス)」が増えるほど高圧になることを示しています。(.357マグナムは35,000psi以下)

弾の入手についてですが、私は定期的に開催されるGun Showでお買い得な1,000発入りアモ缶を調達するのが常でした。店頭販売は価格が高いので、Gun Showかネット通販での購入がお勧めです。上の画像では.357マグナムが1,100発、.38スペシャルが300発ほどあります。

弾は重いので、店頭やGun Showでの大量購入には台車などカートが必須です。.357マグナムは弾頭だけでも1,000発で10kgぐらいありますし、ケースとパウダー込みでトータル16~17kgぐらいになります。BB弾1,000発分をイメージして購入すると後悔するでしょう。

私はサンフランシスコ・ベイエリア周辺やネバダ州の一部のGun Showしか知らないので他州の状況はわかりませんが、大抵Gun Showは入場チケットを購入したら 会場の出入りが無制限に自由であるため、先に弾を購入してから駐車場に戻ってマイカーのトランクに弾を積むという光景をよく見ました。お買い得な弾はすぐに売り切れてしまうので、弾を購入してから銃を物色するのがお勧めです。

 

357error

大量購入すると中にはまれにエラーが混ざっているもので、弾頭が前後逆にロードされた.357マグナム弾を発見しましました。これを発見してしまうと、同時購入した.38スペシャルのワッドカッターも、「実は前後逆なのでは?」と不安になります。というのも、DEWC(ダブル・エンデッド・ワッド・カッター)の現物を見たのは初めてで、普段あまりみかけないロードだったからです。DEWCとは、前後の区別がないワッドカッター弾頭です。

前後が逆だけなら撃っても問題ありませんが、パウダーに問題があるとマズイので、一応撃たずにブレット・プラー(弾頭抜き器)で弾頭を抜いて「弾薬の構造」の更新に使用しました。

 

 

発射と同時に宙に浮く弾

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画像は.357マグナム弾(ジャケッテッド・ソフト・ポイント/JSP)をGP100のシリンダーに装填した状態です。弾頭の先端からシリンダー前面まで少しギャップがあるのがわかります。カートリッジの全長が短い.38スペシャル弾だと.357マグナム弾より約3mm奥から発射されるため、ほんの一瞬ですが滞空時間が僅かに長くなります。

【SAAMI規格では、.357マグナム・リボルバーのシリンダーの弾の出口は内径が9.093mmに対し、弾の直径が9.017~9.093mm(ジャケッテッド弾)、バレル内径が8.79mm(谷径9.02mm)です。】

以前、5.56mmNATOについて解説した際に、スロートの長さと命中精度の関係について触れましたが、厳密にはリボルバーも発射直後からライフリングまでの弾頭の滞空時間が命中精度に影響します。滞空時間が長ければ弾頭の向きに変化を生じさせ、微妙に中心軸がズレた状態で弾頭がライフリングに噛んで通過しかねません。

しかし、リボルバーで狙う距離は大体25ヤード以下なので、ガンファイトやプリンキングでこれは大きな問題となりません。もし、スコープを装着してハンティングや精密射撃をする場合、または遠距離を狙う場合は、気にしたほうが良いでしょう。やはり、.357マグナム弾は.357マグナム・リボルバーで、.38スペシャル弾は.38スペシャル・リボルバーで撃つのがベストです。

 

 

実射

gp100shooting

25ヤード(22.86m)から射撃開始。私にとって25ヤードがデフォの射撃距離です。タクティカル・シューティングでは「25ヤード以上はライフルにスイッチングしろ」というインストラクターがいますが、25ヤードという距離はハンドガンでは遠いものです。逆にいえば、大は小を兼ねるではありませんが、25ヤードに慣れていれば近くでも当たるということですね。撃つ瞬間は、マズルの位置と方向をイメージし、指の腹で一定速度でトリガーを引くのがコツです。

25ヤードだと、晴れていれば飛んでいく弾頭が肉眼で確認できます。

 

gp100target

GP100はシングル・アクション、ダブル・アクション共に「よく当たる」良いリボルバーです。私の場合、撃ち始めは25ヤードで20cm以内にビシビシ命中するのですが、次第に疲れてくると集中力が途切れ、明後日の方向に当たります。.22LRだともう少し集中力が持続して撃てますが、弾薬が強力になるとリコイルが強く、銃も重い(1,134g)ので疲労が早いですね。これは個人差があるでしょう。

注意したい点:リボルバーは連続して射撃すればシリンダーが触れなくなるほど加熱されるので、射撃の際は火傷にお気をつけください。チャンバーが汚れて加熱が酷くなるとケースが張り付き、エジェクター・ロッドをハンマーで叩かないと排莢できなくなることもあります。(GP100ではありませんでしたが、他のリボルバーで何度か体験したので。)

 

gp100sight

フロント・サイト(左)とリア・サイト(右)

サイト・ピクチャーは悪くない・・・が、良くもない。普通といえば普通。反射防止のグルーヴはしっかり機能しています。レッドやホワイトは一切ないので、薄暗くなると少々狙い辛いですね。使用状況がCQBならこれで抜群ですが、ターゲット・シューティングならアジャスタブル・リアサイトが搭載されているモデルを選択した方が良さそうです。

 

 

フリンチング対策

英語でフリンチ(Flinch)とは、「ひるむ」「たじろぐ」といった意味ですが、射撃の瞬間にリコイルを予測し、無意識にトリガーをガク引きすることを「フリンチング」と呼びます。フリンチングが起こると、狙った場所より下方へ弾が命中しがちです。脳が過去の経験から強いリコイルが来ることを予測して筋肉を動かしフリンチングが発生するので、射撃経験が豊富でも起こる現象ですが、逆に射撃未経験者の方が起こりにくいことがあります。

gp100ammo

私はフリンチング対策として.357マグナムと.38スペシャルを混ぜ、ランダムにGP100に装填してトレーニングしていました。次弾が強烈なリコイルなのか、それとも弱いリコイルなのか、予測できない状況にし、ガク引きを認識しやすくしたのです。このトレーニング方法は私の我流ですが、効果があると勝手に信じています。 ロシアンルーレット方式だとケースの位置が見えてしまうので、異なる弾を混ぜた方が自分を騙せます。

私はベレッタ92FSで多くフリンチングが出たのですが、克服するのに数千発必要でした。個人差があると思いますが、撃ち慣れないと対処が難しいことがあるでしょう。また、銃のモデルによってフリンチングの頻度に差が出るので、シューターの手の大きさや弾薬、トリガー・プルやグリップの大きさも影響するように思えます。

 

 

分解図

分解の説明に入る前に、GP100がどんなパーツで構成されているか見てみます。

・・・といっても、特に説明は要らないでしょうか。

GP100以前のシックス・シリーズ(セキュリティー・シックス、ポリスサービス・シックス、スピード・シックス)では、フロント・サイトは横からピンを挿して固定していましたが、GP100ではマズル側からプランジャーで固定しています。(すみません、【前編】で触れるのを忘れていました。)

銃の画像

Photo via Sturm, Ruger & Co., Inc.

 

 

 

ディスアッセンブリー(分解)方法

分解の前に、弾が装填されていないことを確認します。作業台に実弾を置くのもNGです。

gp100grip

最初にグリップ両面の木製グリップ・パネルをマイナス・ドライバーで外します。

分解中ドライバーが必要なのはこれだけ。グリップには円柱のグリップ・パネル・ロケーターが貫通しているので、これを抜き取ります。

グリップ右側にはディスアッセンブリー・ピンが保持されており、分解に必要なツールなので、無くさないよう注意します。

 

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ハンマーをコックし、ディスアッセンブリー・ピンをハンマー・ストラットの穴に差し込む。

これによりハンマー・ストラットをメイン・スプリングと共に取り外せます。

 

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ハンマー・ストラットを取り外したら、ハンマー・ピボット・アッセンブリー(ハンマー・ピン)を右側から抜いてハンマーを取り外します。

 

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ハンマー・ストラットをフレーム後部の穴から差し込み、トリガー・ガード・ラッチを押し込む。

細いマイナスドライバーでもOKです。

ラッチが押し込まれるとトリガー・メカを取り外せます・・・が、ラッチが固いことがあるので、軽くハンマー等を使用しても良いでしょう。

GP100の分解で最も難しい作業ですが、逆に言えば難しいと言ってもこの程度です。GP100の分解は短時間で簡単に行えます。

トリガー・ガード・ラッチを押し込むと、トリガー・メカがまるごと引き出されます。

トリガー・メカ先端がフレームに掛かる構造なのは、AK-47のマガジン保持構造と似ています。

 

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トリガー・メカを取り出せば、シリンダーをフレームから抜き取ることができます。

これに力やコツは必要としません。

 

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以上で終了。

クレーン・ラッチを分解する場合は、別途小型のマイナス・ドライバーが必要になりますし、フロント・サイトやトリガー・メカの分解には、ピンポンチなどツールを必要とします。ですが、基本的な分解はこれだけでOKです。

同じスターム・ルガーでもMKIIの分解は地獄の面倒くささですが、GP100は非常にメンテナンス性に優れています。

 

 

組立方法

組立方法は以下のスターム・ルガー公式動画をご覧ください。 基本的に分解方法の逆の手順です。

 

 

GP100の問題点

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GP100は精度が良く頑丈で信頼の置けるリボルバーですが、気に入らない点もあります。それは、重くスムーズさに劣るトリガー・プル。ダブル・アクションでは、ある程度トリガーを引くと次第に重くなります。

徐々に重くなるなら良いのですが、GP100はある地点で急に重くなるように感じられます。 ここがS&Wに劣ると言われるマイナス点でしょう。

しかし、実用上問題であるかと言えば、致命的ではありません。これはトリガー・フィーリングの好みで意見が分かれる点だと思います。もし気に入らなければ、GP100専用カスタム・トリガーを別途入手可能ですし、トリガー・プルも別途サードパーティーのパーツで簡単に解決できます。

 

 

編集後記

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私はシティーハンター世代なので、.357マグナムといえば冴羽獠のパイソンをイメージします。子供の頃、初めて購入したエアガンのリボルバーは、LS製パイソン(エアコキ)の組立モデルでした。飛距離は数メートルでしたが、頭の中のイメージでは、激しいリコイルと硝煙の香りが充満する、ちょっと危ない子供だったと思います。

実銃のパイソンを初めて射撃したのは2001年のことです。その後、パイソンを探してサンフランシスコ周辺のガンショップとGun Showを探して歩きましたが、なかなか納得のいく価格とコンディションを見つけることができませんでした。そしてある日のこと、いつも通り近くのGun Showに参加した際、知り合いのディーラーがブースを出展しており、そこで見つけたのがGP100でした。

「冴羽獠のパイソンも4インチだったなぁ」と思いながら、少し迷いつつ購入してみたところ、撃てば撃つほどGP100の素直さに魅力を感じることとなりました。.357マグナムは経済的な弾薬であり、比較的高価であるマグナム・カートリッジの中では維持費を安く楽しむことができます。アメリカでは良い意味で「頭オカシイんじゃないの?」と思えるハイパワー・マグナム・カートリッジが蔓延していますが、.357マグナムは不快感が少ないマグナム弾で、「数を撃てる」マグナム弾だと思います。

パイソンやGP100のようなフルラグのバレルを装備する.357マグナム・リボルバーは、重心が前方に移動するので相対的にマズルジャンプが小さく、次弾を撃つためのリカバーが早くなります。フルラグ4インチ・バレルはそういった意味でバランスが良く、マズルの方向を感覚的に認識するためにもメリットがあるでしょう。また、GP100はグリップ・フレームを大きくカットしてラップアラウンド・グリップを装着しているので、リアが軽くなり、重心の前方移動を助けています。この重心バランスが、.357マグナムでありながら撃ちやすくなり、射撃の楽しさを実現しているのだと感じます。

スターム・ルガーGP-100【前編】特徴と構造他
スターム・ルガーGP-100をご紹介します。 スターム・ルガーGP-100 1986年、ルガー・セキュリティー・シックス(1970~85年製造)に代わるニュー・モデルとして、スターム・ルガー社はGP100を市場に投入しました。 セキュリティー・シックスはスターム・ルガー社製品の中でも成功した信頼性の...

テクニカルデータ

モデル GP100
口径 .357MAGNUM (.38SPL)
ライフリング 6条右
ツイスト(ライフリング) 1:18 3/4インチ
装弾数 6発
全長 238mm (9.375inch)
全高 146mm (5.75inch)
バレル長 4inch
シリンダー回転方向 左回転
シリンダー径 39.2mm(1.545inch)
トップストラップ幅 17.4mm(0.685inch)
トップストラップ厚 6.2mm(0.245inch)
重量(アンロード時) 1134g
フロントサイト 固定
リアサイト 固定
セイフティ トランスファー・バー(インターナル)
価格(スタンダード・モデル) MSRP 725 USD(アジャスタブル・リアサイト付)