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ミニエー弾の窪みの理由と現在の弾丸との違いとは?プリチェット弾とは?

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.45ACPとミニエー弾(右) Photo via thetruthaboutguns.com

ご質問を頂きました。

弾丸の形状について質問です。

ミニエー弾は底部をスカート状に窪ませ発射ガスによってライフリングに食い込ませるとのことですが、現在のライフル弾の底部は真っ平らの認識です。

これは薬室に装填された段階で既にライフリングに食い込んでいるので窪ませる必要がないということなのでしょうか?

薬室に装填された状態でライフリングに食い込むのは、薬室のスペックに弾薬が適合していない可能性があります。

通常は装填された弾頭はライフリングに接触しません。

装填位置の弾頭から銃身の接触面までの隙間は「フリートラベル・クリアランス」や「ブレットジャンプ」と呼ばれます。

また現代でも底に窪みのある弾丸(ホローベースブレット/HB)が使用されています。

しかしミニエー弾とはそれぞれ目的と効果が異なります。

ミニエー弾の効果

ミニエー弾は1849年にフランス陸軍のクロード・エティエンヌ・ミニエーによって発明されました。

射程距離の延長

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ミニエー弾の底には穴が開けられており、金属プラグで栓をした状態になっています。

発射時には装薬の燃焼によって発生したガス圧によって金属プラグが弾を内側から外側へ向かって押し広げ、弾と銃身の隙間からガスが逃げるのを防ぎます。

ガス圧の弱い黒色火薬を使用していた当時の銃は無駄なくガスを利用することが重要で、これにより射程距離が大幅に延長されました。

装填速度の向上

マズルローダー(前装式銃)は銃口から弾を装填しますが、ライフリングが備わっている銃身では弾が途中で詰まりやすく、装填が困難です。

そこでミニエー弾はライフリングが備わった銃身でもスムーズに通過できる直径で製造され、楽に装填が可能でありながら発射時に弾の底を拡張させることでライフリングに食い込ませることに成功しました。

この発明により銃の装填速度と命中精度が向上しました。

プリチェット弾とは?

ミニエー弾と構造が近いプリチェット弾が存在します。

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プリチェット弾 Photo via papercartridges.com

ミニエー弾は1849年にフランスのクロード・エティエンヌ・ミニエーによって開発された弾です。

一方、プリチェット弾は1853年にイギリスのウィリアム・メトフォードの設計を利用し、同じくイギリスのロバート・テイラー・プリチェットが完成させた弾です。

そのため「プリチェット」や「メトフォード・プリチェット」などと呼ばれます。

ミニエーとプリチェットはどちらの弾も後方に穴があり、穴を埋める蓋となるプラグをガス圧で押すことで弾の後部が周囲に広がり、ライフリングに食い込んで回転する構造です。

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プリチェット弾ととミニエー弾 Photo via svartkrutt.net

ミニエーは弾の周囲にグリス(牛脂や蜜蝋)を保持するための溝があり、グリスによって汚れ(鉛やカーボン)による銃身の詰まりを防ぎましたが、大量に発射すると詰まるため装填が困難になる問題がありました。

しかし、プリチェットは弾の周囲に溝が無い現代の弾頭に似た表面で、弾の周囲に油を浸した紙を巻く「ペーパーパッチング」によって銃身の詰まりを防ぐ方法を採用し、クリーニング無しでも大量に発射可能となりました。

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Photo via Enfield cartridges by Bruce Carins

ミニエーは穴の蓋として金属プラグを使用し、一方プリチェットは当初プラグ不要とされていたものの、製造時に生じた誤差を修正し精度を得るために後にプラグが使用されるようになりました。

プリチェットでは金属プラグが使用された後、新たな口径と規格に変更されると共にプラグの材質が蜜蝋に漬けた木製プラグに変更され、その後入手しやすい粘土プラグへと変更されています。

現代のミニエー弾

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.45ACPホローベースブレット photo via nereloading.com

現在ではガス圧の高い無煙火薬を使用し、銃口から弾を装填する必要もなくなりましたが、命中精度を向上させる目的でホローベースブレットも利用されます。

基本原理はミニエー弾と同じで、ライフリングにしっかり食い込むことで弾丸を回転させ、直進性がより確実になります。

同じ口径の弾頭を比較したとき、弾頭重量が重くなるに比例して弾頭の全長が長くなりますが、底に窪みを設けると軽い弾頭重量でも長い全長を維持でき、ライフリングとの接触面が広がることでライフリングの食い込み力が向上します。

また少ない装薬量で装填しても必要な弾速を維持できるようになると同時に、弾の重心が前へ移動することで命中率向上が期待できます。

これはハンドガンの射程距離ではあまり違いが見られませんが、距離が離れるとより顕著になります。

ただ一方でデメリットもあり、ホローベースブレットはジャケットの無いキャストブレット(鉛100%)で利用されることも多く、この場合、消費弾数が多いと熱で溶けた鉛が銃身に固着するレッディングが起こりやすくなります。

またマグナム弾などガス圧の強い弾薬で使用すると発射時に弾の底が裂けることがあり、最悪の場合は弾が前後に分離してリング状の鉛が銃身内に残されることもあります。

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