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ミニエー銃とは? ミニエー弾とプリチェット弾

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.45ACPとミニエー弾(右) Photo via thetruthaboutguns.com

ミニエー銃は、パーカッションロック式の前装式ライフル歩兵銃の総称です。

ミニエー銃というモデル名のライフルが存在したわけではなく、ミニエー弾を使用するライフルがミニエー銃と呼ばれました。

なかでも、イギリスのエンフィールド(パターン1858エンフィールド)や、アメリカのスプリングフィールド(モデル1861)が有名です。

ミニエー弾は1849年にフランス陸軍のミニエー大尉によって開発され、従来のマスケット銃に改修を施して製造されました。

従来までの装填方法が改善され、飛距離と連射性が向上しています。

ミニエー銃は19世紀中頃の主要な歩兵銃であり、装填速度向上により広く使用されました。

そして、ブリーチローディング(後装式)のライフルが登場したことによって廃れていった歴史があります。

ミニエー弾

ミニエー弾は、1849年にフランス陸軍のクロード・エティエンヌ・ミニエー大尉によって発明されました。

射程距離の延長

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ミニエー弾の底には穴が開けられており、金属プラグで栓をした状態になっています。

発射時には装薬の燃焼によって発生したガス圧によって金属プラグが弾を内側から外側へ向かって押し広げ、弾と銃身の隙間からガスが逃げるのを防ぎます。

ガス圧の弱い黒色火薬を使用していた当時の銃は無駄なくガスを利用することが重要で、これにより射程距離が大幅に延長されました。

装填速度の向上

マズルローダー(前装式銃)は銃口から弾を装填しますが、ライフリングが備わっている銃身では弾が途中で詰まりやすく、装填が困難です。

そこでミニエー弾はライフリングが備わった銃身でもスムーズに通過できる直径で製造され、楽に装填が可能でありながら発射時に弾の底を拡張させることでライフリングに食い込ませることに成功しました。

この発明により銃の装填速度と命中精度が向上しました。

プリチェット弾

ミニエー弾と構造が近いプリチェット弾が存在します。

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プリチェット弾 Photo via papercartridges.com

ミニエー弾は1849年にフランスのクロード・エティエンヌ・ミニエーによって開発された弾です。

一方、プリチェット弾は1853年にイギリスのウィリアム・メトフォードの設計を利用し、同じくイギリスのロバート・テイラー・プリチェットが完成させた弾です。

そのため「プリチェット」や「メトフォード・プリチェット」などと呼ばれます。

ミニエーとプリチェットはどちらの弾も後方に穴があり、穴を埋める蓋となるプラグをガス圧で押すことで弾の後部が周囲に広がり、ライフリングに食い込んで回転する構造です。

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プリチェット弾ととミニエー弾 Photo via svartkrutt.net

ミニエーは弾の周囲にグリス(牛脂や蜜蝋)を保持するための溝があり、グリスによって汚れ(鉛やカーボン)による銃身の詰まりを防ぎましたが、大量に発射すると詰まるため装填が困難になる問題がありました。

しかし、プリチェットは弾の周囲に溝がない現代の弾頭に似た表面で、弾の周囲に油を浸した紙を巻く「ペーパーパッチング」によって銃身の詰まりを防ぐ方法を採用し、クリーニング無しでも大量に発射可能となりました。

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Photo via Enfield cartridges by Bruce Carins

ミニエーは穴の蓋として金属プラグを使用し、一方プリチェットは当初プラグ不要とされていたものの、製造時に生じた誤差を修正し精度を得るために後にプラグが使用されるようになりました。

プリチェットでは金属プラグが使用された後、新たな口径と規格に変更されると共にプラグの材質が蜜蝋に漬けた木製プラグに変更され、その後入手しやすい粘土プラグへと変更されています。

現代のミニエー弾

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.45ACPホローベースブレット photo via nereloading.com

現在ではガス圧の高い無煙火薬を使用し、銃口から弾を装填する必要もなくなりましたが、命中精度を向上させる目的でホローベースブレットも利用されます。

基本原理はミニエー弾と同じで、ライフリングにしっかり食い込むことで弾丸を回転させ、直進性がより確実になります。

同じ口径の弾頭を比較したとき、弾頭重量が重くなるに比例して弾頭の全長が長くなりますが、底に窪みを設けると軽い弾頭重量でも長い全長を維持でき、ライフリングとの接触面が広がることでライフリングの食い込み力が向上します。

また少ない装薬量で装填しても必要な弾速を維持できるようになると同時に、弾の重心が前へ移動することで命中率向上が期待できます。

これはハンドガンの射程距離ではあまり違いが見られませんが、距離が離れるとより顕著になります。

ただ一方でデメリットもあり、ホローベースブレットはジャケットのないキャストブレット(鉛100%)で利用されることも多く、この場合、消費弾数が多いと熱で溶けた鉛が銃身に固着するレッディングが起こりやすくなります。

またマグナム弾などガス圧の強い弾薬で使用すると発射時に弾の底が裂けることがあり、最悪の場合は弾が前後に分離してリング状の鉛が銃身内に残されることもあります。

ガーディナー・マスケット・シェル

かつて、内部に爆薬が仕込まれた弾丸が使用されていたことがありました。

南北戦争ではサミュエル・ガーディナーによって開発されたガーディナー・マスケット・シェルと呼ばれる弾(.58口径と.52口径の二種)が、「チャンセラーズヴィルの戦い」と「ゲティスバーグの戦い」で使用されています。

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Photo via civilwartalk.com

この弾は内部に火薬を入れた銅の殻を仕込み、鉛とスズを使用した柔らかい外殻により破裂しやすい構造となっています。

そして弾丸の底に空いた穴に燃焼速度の遅い火薬を詰めることで、発射から約1.5秒後にメインの火薬に引火するという仕組みです。

(火薬の不具合により誤って瞬間的に引火すれば銃身内で爆発することもあり得ます)

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ガーディナー断面 Photo via worthpoint.com

ガーディナーが発明された背景には、膠着した塹壕戦を打開するためという目的があったと言われています。

しかし、兵士たちの間では「非人道的」「引火の恐れがあり扱い難い」などの理由から、評判が悪かったとされています。

また、発掘されたガーディナーシェルを調べてみると、すべてが予定通りバラバラに砕けていたわけではなく、弾の片側に穴が開いたり、不発が多かったりと、実際には効果的ではなかったと考えられています。

使用された量が少ないことからも、これが効果が無かったことの裏付けとも言えます。