ライフル射撃の基礎知識 ゼロインとMOAとMil

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ライフル射撃は奥の深い世界で、いくら語っても語りつくせませんが、今回はライフル射撃に必要な基礎知識について解説したいと思います。

(上の画像は私が通っていた100ヤードのシューティングレンジです。左がRemington M700 SPS .308win、右がEOTech552を載せたSKSライフル。)

 

 

弾は放物線を描いて飛ぶ

弾は空気抵抗と重力の影響を受けながら飛びます。高速で撃ち出された弾は浅い角度で高度を上げ、やがて空気抵抗により角度を強めながら落ちます。(真空で撃つと上昇角度と下降角度は等しくなる) これらの角度や距離は、弾の速度や重量、高度、温度、発射角、弾の空気抵抗など、様々な要因により決定されるため一定ではありません。

弾が発射されて落下するまでの間で上図のA地点とB地点の二ヵ所で弾が交差しますが、このどちらかにターゲットがあると狙った場所に命中します。狙った場所と実際の着弾点が一致するように照準を合わせる作業をゼロイング(ゼロイン / 零点規正)と言います。通常はB地点で命中するようにゼロインされます。

 

ゼロインの方法

スコープにはレティクル(スコープを覗くと見える十字線)があり、スコープに備わっているウィンデージ・ノブを回して左右、エレベーション・ノブを回して上下にレティクルを動かします。

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ライフルによってはノブを最大限に回しても正しい位置に移動できないことがありますが、それはスコープの搭載位置に問題があると考えられます。そんなときはスコープのマウントベースやスコープリングに薄いシートを挟むことでスコープ本体の角度を調節できます。この作業を「シミング(Shimming)」と呼び、挟まれるシートをシム(Shim)と呼びます。

l_080814000_1Photo via brownells.com

 

ゼロインで最初に行う作業は銃の固定です。専用のライフルレストを使用するのも良いですし、サンドバッグでも構いません。何らかの方法で銃を固定します。バイポッドがあれば、サンドバッグの上にストックを載せれば簡易的に固定できます。

ボルトアクション・ライフルの場合、ボルトをアクション(機関部)から抜くと、銃の後ろからバレルの中を貫通して見通せます。まず最初に後ろからバレル内を覗いてターゲットを確認し、バレルをターゲットの中心に向けます。そして、そのまま銃を動かさないでスコープを覗き、レティクルをターゲットの中心に移動させます。このとき倍率を変更できるスコープは最大倍率にして行います。

 

 

ボアサイターで時間短縮

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ゼロインの作業を助けるボアサイターと呼ばれる器具があります。必須ではありませんが、あれば便利なもので、実際に撃たなくてもレティクルを着弾点に近付けることができます。

ボアサイターにはレーザーを使用するものや光学機器を利用するものなど様々あり、上の画像のマグネット式ボアサイターは、マズルに磁石でくっつけるとスコープの視界に目盛が現れるので、レティクルをこの中心に移動させて調整します。個人的に使用感が良くて気に入っていますが、あくまで当たりを付けられるだけの道具なので、正確なゼロインは実際に撃つしかありません。

 

 

冷えたバレルでゼロインする「コールド・バレル・ゼロ」

軍や警察特殊部隊のスナイパーは、ゼロインする際に短時間で連射しません。それはバレルの温度が冷えた状態と高温の状態では着弾の結果が異なり、実際の現場では冷えたバレルから一発撃つだけで作戦が終了するのが通常だからです。

そのため、彼らは1発撃つと(外気温に応じて)概ね2分以上間隔をあけてバレルの温度が上昇しないように努め、次弾を撃ちます。これを「コールド・バレル・ゼロ」と呼びます。

趣味で射撃をする者にとっては重要ではありませんが、やはり熱いバレルから撃つのは精密射撃には良くないので、気に留めておくと良いかもしれません。

 

 

ゼロインは近距離で当たりをつけ、遠距離で仕上げる

ゼロインの目的は狙った地点で弾と視線を交差させることです。この作業中に横風が吹くと支障があり、また同時に、ゼロインは射撃ごとに着弾点を何度も確認しなくてはなりません。これらの問題を解決するため、最初のゼロインは25ヤードといった近距離で行います。近距離であれば風の影響が抑えられるうえ、スポッティング・スコープを使用しなくともスコープを通して着弾点を簡単に確認できます。

このとき、レティクルの中心と着弾点が一致する必要はありません。一発撃ってみてレティクルがどの程度ズレているかを知ることが目的です。(ボアサイターなどで予め満足できる当たりが付いている場合は必要ありません。)

もし使用弾薬の弾道を知っている場合は、最初の図で示したA地点でゼロインすると良いでしょう。例えば、35ヤードでA地点を通過し、200ヤードでB地点を通過する弾薬であれば、35ヤードで最初にゼロインします。

近距離で良い結果が得られたら、次は仕上げに100ヤードや200ヤードといった距離で射撃して確認します。

 

 

 ゼロインは複数発撃って平均をとる

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上の画像は私がゼロインで100ヤードから.308winを撃った結果です。中央の黒丸(直径3.5cm)にレティクルを合わせて射撃した結果、最初にAの場所に着弾しました。右上に寄っているため、左下に修正する必要があります。このとき、銃を動かさないでスコープを覗いたままレティクルを中央黒丸からAの場所へ移動させてゼロインします。(使用した銃はRemington M700SPSですが、100ヤードにしては若干バラつきが大きい結果となりました。これは弾薬の問題と銃がしっかり固定されていなかった私のミスです。この銃は正しく撃てば全弾黒丸に命中する実力があります。)

ノブを数クリック回して撃った結果、今度はBの場所に集弾しました。予想より行き過ぎてしまったので、再度修正して射撃すると黒丸に命中しました。ゼロインの際は一発ごとに修正せず、3~5発撃って一回修正するのが正しい方法です。できるだけ平均を取りましょう。

ゼロインにはゼロイン専用のターゲットも存在します。専用ターゲットは将棋板のように升目が描かれているので、より計算しやすい仕様となっています。

 

 

ゼロインはいつ必要か?

一度ゼロインしたら二度と再ゼロインする必要がないわけではありません。以下の場面でゼロインする必要があります。

  • スコープに衝撃が加わった形跡があったり、ノブが動いてしまった
  • ストックとアクション(機関部)を分離した
  • 銃を輸送した
  • チークレストの高さ(頬に当てる部分)やバットの長さ(ストックのパッド幅)を変更した
  • 弾薬を変更した
  • 気温が華氏上下20度(摂氏6.67度)変化した
  • 前回ゼロイン時と今回使用時の標高が1500フィート(457.2m)以上異なる
  • (軍や警察は)予定された作戦の前

ゴルゴ13が狙撃の前に銃にスコープを取り付けるのは実際の精密射撃にはアウトですが、多少ズレても良いという妥協点があれば良いといえるかもしれません。どの程度ズレるかはコンディション次第なので、撃ってみなければ分かりません。

また、ゼロインする時間は日光により熱で空気が動き出す前の朝方が良いといわれています。

 

 

ゼロインの仕上げ

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ゼロインが終了したら、ノブの位置を変更します。上の画像のノブに小さな穴が見えますが、この穴の中のイモネジでノブを固定しています。このネジを一旦緩め、ノブに表記された「0」とスコープ本体に表記されたラインと合わせてネジを締めます。これで完了です。

ノブを回しているとレティクルの中心がスコープ本体の中心からどの程度ズレているか分からなくなることがあります。そのときはノブを左右どちらかに限界まで回し、そこから逆回転させて回転が止まるまで何クリックあるか数えます。単純に、ノブが端から端まで8回転したとしたら、今度は端から逆回転で4回転させればリセットされます。勿論、ノブを回してしまったら再度ゼロインが必要です。

画像をご覧の通り、スコープのウィンデージ・ノブやエレベーション・ノブには目盛りがついており、スコープのモデルによって一目盛りでどれだけレティクルが移動するかが異なります。一目盛りを1クリックと言いますが、クリックの意味を理解するには「MOA」や「Mil(ミル)」といった単語の意味を知る必要があるでしょう。

 

 

MOA(ミニット・オブ・アングル) とは?

MOAとは角度(分)のことです。円の一周360度の一度を更に60分割した値が1MOA(1/60度)となります。ライフル射撃には必ず利用される単位なので覚えておいて損はありません。

1MOAは100ヤード先で約1インチの大きさになります(厳密には1.047インチ)。200ヤードで2インチ、300ヤードで3インチです。スコープのノブには「1クリック=1/4MOA」と表記されていることがありますが、これはノブを「4目盛り分(4クリック)」回すと1MOA分レティクルが動き、100ヤード先で1インチ移動することを意味します。同様に、1000ヤード先では10インチ移動します。

例として、もし1/4MOAのスコープのレティクルの中心がターゲットの中心を捕らえているにも関わらず、100ヤード先のターゲットの中心から右へ3インチ、上へ3インチの位置に着弾した場合、エレベーション・ノブを右へ12クリック、ウィンデージ・ノブを右へ12クリック回すと着弾点とレティクルが合います(理論上は)。

因みに、軍事用語で1クリックは1kmを意味することがあるので、混同しないようご注意下さい。

 

 

軍で使用されるMIL(ミル)とは?

軍ではMil(ミル)という単位の角度が使用されます。円の一周360度を6283で分割した角度のことを指します。実際の現場では計算しやすいように6400分割として運用されているようですが、正確には6283分割です。

ミルという単位はメートル法を利用する我々日本人にはMOAより分かりやすいかもしれません。1ミルは100メートル先で10センチメートルの大きさになります。1km先の目標は1ミルで1メートルです。

 

長くなったので今回はここまで。

次回はFPSゲームにも役立つかもしれない?ミルドット・スコープとSVDタイプ・スコープの使い方について解説します。

 


 
 
 
 
 
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