フロリダ州ナイトクラブ乱射事件で使用された銃

フロリダ州オーランドのナイトクラブで12日に発生した銃撃事件は、50人が死亡し53人が負傷するアメリカ史上最多の死傷者を出す事件となりました。

これまで史上最悪だったバージニア工科大銃撃事件(死者33人)を超える事件で、1999年に社会問題化したコロンバイン高校銃乱射事件(死者13人)が霞んで話題にされることが少なくなっている気がします。

 

ところで、「乱射事件」という日本語は少し違和感があります。

実際に犯人がしっかり狙って射撃していても、適当に「乱れ撃ち」をしているような印象を受けるのですが・・・。

この手の事件は英語ではMass Shootingと呼びますが、「大量射殺事件」ではダメですか?

 

 

今回の事件で使用された銃

現時点ではAR-15 (.223口径)とグロックピストル(9mm口径)が使用されたと報道されていますが、詳細は不明です。

また、使用されたピストルは警察の証言で「グロック19のようだった」という報道もあります。

日本のマスコミはAR-15を「突撃銃」と報道していますが、AR-15は半自動銃(セミオートマチックライフル)であり、突撃銃(アサルトライフル)ではありません。アサルトライフルとは、セミオートとフルオートが切り替え可能な、着脱式マガジンをもつライフルを指します。

2016/06/22追記:米フォックス5ニュースは、AR-15はアサルトライフルではないことを認め、訂正と謝罪をしました。日本のマスコミも見習ってほしいものです。

 

ATFはツイッターで以下の内容をツイートしています。

この画像は犯行に使用された銃ではく、このようなタイプの銃が使用されたという一例です。

使用された銃の詳細が判明すれば、このページで追記したいと思います。

 

 

追記:使用された銃はSIG SAUER MCXとグロック17

警察発表により、事件で使用された銃はSIG MCXとグロック17と判明しました。

当初報道されていた「AR-15」ではありませんでした。

SIG MCXはAR-15と外見が似ていますが、マガジンや一部のパーツを除き、殆どのパーツに互換性がありません。

容疑者は6月4日にSIG MCXを購入し、翌6月5日にグロック17を購入。どちらも合法的に購入されたものでした。

 

Photo via sigevolution.com
Photo via sigevolution.com

※画像はサプレッサー付きですが、事件ではサプレッサーを使用していません。

SIG MCXは最近流行の「マルチキャリバーライフル」です。バレル交換により複数の弾薬(300BLK / 5.56 NATO / 7.62x39mm)を使用可能。作動方式はショートストロークピストンを利用し、AR-15と同様のローテイティングボルトを採用しています。また、2段階のガスレギュレーターを装備しているので、サプレッサー使用時に切り替え可能です。
リコイルスプリングがアッパーレシーバー内に収まっているため、ストックはスケルトンタイプのサイドフォールディング方式となっています。ストックを折り畳めることで持ち運びやすく、総重量は2.72kgと軽量です。

操作方法はAR-15と同じですが、セレクター、マガジンキャッチ、チャージングハンドルラッチが完全にアンビ化されており、利き手を選ばない設計がされています。セレクターはセイフティとセミオートが切り替えられ、マガジンキャッチがAR-15よりも大型化されているため、マガジン交換時の操作性が向上しています。また、操作性の良いL字型ボルトリリースによりボルトを解放し、素早く弾薬をチャンバーに装填可能です。

Photo via thetruthaboutguns.com
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アッパーレシーバーは前方まで伸び、トップは全面ピカティニーレイルを装備したため、ダットサイト等アクセサリー類の配置に自由度が高い。サイトはフロントとリア共にフリップアップ式を採用しており、光学サイト使用時にバックアップサイトとなります。
また、KeyModフォアエンドはアッパーレシーバー側面のレイルに沿って前方からスライドさせて組み込まれているため、バレル交換時の分解の容易さと、剛性を両立させています。

SIG MCXには興味深い特徴がいくつかあるのですが、レシーバー左側に「メタルカムパス・ウェアインサート(Metal Cam Path Wear Insert)」、または「カムパス」とSIGが呼んでいるパーツがあります。これはレシーバーの内側でボルトカムピンが接触する部分となり、カムピンによる摩耗などで作動に不具合が出たときに交換できるようレシーバーの一部が別パーツとなっています。
通常、AR-15でも問題となる箇所ではないので、ある意味SIGは非常に慎重だと思わされます。(殆どのユーザーには不要だと思いますが・・・)

Photo via sigevolution.com
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そして次に興味深いのが、後部テイクダウンピン下のロアレシーバー側にプランジャーが内蔵されており、スプリングのテンションによってアッパーレシーバー(ピンブロック)を押し上げています。アッパーレシーバーとロアレシーバーを結合させる際には、アッパーレシーバーを上から押しながらテイクダウンピンを押し込むことでピンを挿入できます。これにより結合が確実となり、レシーバーのガタツキがありません。



SIG MCXはAR-15のロアレシーバーを使用することも可能ですが、そうすると、レシーバー後部の形状が異なるため、MCXのバッファーの一部が露出してしまいます。一応、問題なく撃てるそうですが、破損してバッファーが顔に飛んでこないか不安になるので、MCXにはMCXのレシーバーを使用した方が良さそうな気もします。

それにしても、容疑者は何故こんな高価なライフルを購入したのでしょうか?
SIG MCXはメーカー希望小売価格1,886ドル(約20万円)という、同クラスのライフルでは高級な類です。AR-15系ならこの半額以下で購入できますが、人生最後の買い物として価格は気にしなかったのかもしれませんね。本当にSIGにとっても迷惑な話です。今後、SIGもブッシュマスターやS&Wのように遺族から訴訟を起こされるかもしれません。

事件で容疑者はグロック17も所持し、容疑者の車内からは.38口径(リボルバー?)が発見されたそうです。
グロックについては解説の必要がないほど有名ですから、概要はウィキペディアをご覧ください(適当)。

 

 

フロリダ州の銃規制

フロリダ州は比較的に銃規制の緩い州と言われています。

アメリカ市民であれば銃を購入できますが、重罪歴がある人物や精神病患者、その他アルコールやドラッグ依存症がある者は購入できません。これは他の州と同じです。

年齢制限はハンドガンが21歳以上、ロングガン(ライフルやショットガン)は18歳以上であれば購入でき、ロングガンの場合は親の監督下であれば16歳から射撃場やハンティングで銃を使用できます。

購入手続から受け取りまでの期間(ウェイティングピリオド)は72時間(3日間)となりますが、これはハンドガンにのみ適用され、ロングガンはその日のうちに持ち帰ることができます。

ウェイティングピリオドを設けている州は全米50州のうち9州のみなので、フロリダ州は特別に銃規制が緩いというわけではありません。
(元カリフォルニア州民の私は銃購入時に10日も待たされました。10日も!!)

また、フロリダ州では民間人によるサプレッサーやマシンガンの所有が合法です。
ただし、州内でも地域によってレギュレーションが異なるため、実際に所有するには各地元の法律を調べる必要があります。

サプレッサーやマシンガンはNFAアイテムのカテゴリーに入るため、所有には登録、審査、納税(一件につき200ドル)が必要となり、加えて地元の法執行機関から許可を得なければなりません。

 

 

突入したSWAT隊員のヘルメットに被弾

犯人は3時間ほど立てこもり、SWATが突入して犯人は射殺されました。

その際にヘルメットが被弾したとのことです。

Photo via Orland Police
Photo via Orland Police

黒い穴が確認できますが、これは最初から開いていた穴だと思われます。

ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)やMICH(モジュラー・インテグレイテッド・コミュニケーションズ・ヘルメット)には、NVGホール(暗視ゴーグル装着用の穴)が1~3箇所開いているものがあり、このヘルメットも恐らくその一つでしょう。

ケブラーヘルメットは編み込んだケブラー繊維を何枚も重ねた構造なので、ライフル弾が貫通するとササクレたような弾痕が残ります。よってこのような綺麗な穴は開きません。

状態をみるとヘルメットの下に向かって凹みがみられるため、前屈みになっているところをヘルメットの上方向から着弾した様に見えます。

 

こちらの動画ではレベルIIIAのケブラーヘルメットにAR-15を射撃してテストしており、結果は貫通です。

今回被弾したヘルメットもレベルIIIAだと思われますが、貫通しなかったのは射角が浅かったためだと考えられ、この隊員はラッキーでした。

直角に着弾していれば、貫通して死亡した可能性が高いでしょう。

レベルIIIAは.357マグナムや.44マグナムまで停弾可能ですが、ライフル弾を停弾させるにはレベルIII以上が必要です。

関連記事:防弾プレートを撃ち続けるとどうなる?

 

 

現場隊員の装備

Photo via napavalleyregister.com
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今回の銃撃事件後に現場を歩くオーランド警察シェリフSWAT隊員。

H&K UMPを提げており、ヘルメットには暗視ゴーグル装着用NVGマウントが確認できます。

 

Photo via napavalleyregister.com
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こちらの隊員は耳がカバーされていないSOFカットバージョンのヘルメットを着用。

サイドフォールディングストックのH&K UMPに、サイドアームはブラックホークSERPAホルスターにグロックが収まっています。

オーランドのSWATは.357SIGを採用していたようなので、もしかしたらグロック31かもしれません。

 

Photo via napavalleyregister.com
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オーランドの病院を警備する警官。

M16A2のように見えますが、リアサイト形状やディフレクターが無い事から判断すると、A1とA2のミックスのようです。

バレルも細身でA1っぽいですね。

消耗パーツだけ交換して、全体がちぐはぐなARはよく見かけます。

 

Photo via dailymail.co.uk
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現場を歩くFBI SWAT隊員がショートバレルのM4カービンを手にしています。

バーチカルグリップとウェポンライトが確認できます。

ダットサイトはエイムポイントH-1/T-1のように見えますが、この画像では不鮮明でわかりません。

 

 

壁に空いた穴

Photo via dailymail.co.uk
Photo via dailymail.co.uk

壁に開けられた大きな穴。

SWATが突入する際に壁を爆破して突入口を作るウォールブリーチが行われた結果だと思われます。

複数個所を一斉に爆破して同時突入するのがセオリーですが、壁に弾痕があるということは、突入前に離れた場所から穴越しに交戦したということでしょうか。実際にどんな状況だったのか現在は不明です。

AR-15の使用弾薬である5.56mmNATO/.223remは、検証の結果、コンクリートブロックに対して直角に撃つと片面貫通が期待できますが、両面貫通は不可能です。また、45度の角度で着弾した場合は片面貫通も不可能となり、角度があると貫通できないことが知られています。

一方、住宅用の壁として使用される石膏ボードや合板の場合は45度の角度でも貫通します。

 

 

現場は超接近戦だった?

現場のグーグルストリートビューです。

衛星画像を見ると、意外と小さなナイトクラブなのが分かります。

中に突入してしまうと交戦距離は20メートル以下しかなさそうで、これだけ接近戦であれば突入後直ぐに勝負がついたことでしょう。

狭い場所で50~100人が床に横たわり、床が血で覆われていたと考えると、足場が悪く移動困難な内部状況だったのかもしれません。

 

 

まとめ・・・というより私の主張

今回も日米両マスコミはしれっと嘘記事を書いているのを見かけます。

AR-15はフルオートで撃てるマシンガンかのような印象を持たせたり、AR-15は狩猟用ショットガンやライフルより殺傷力が高いというニュアンスの記事が散見されます。アサルトライフルとアサルトウェポンの違いもごちゃ混ぜにして、無知なのか意図的なのか疑わしいところです。
メディア全般に言えることですが、イデオロギー抜きで、「事実は事実」としてしっかり調べて伝えませんか? 「銃は悪」としたいのでしょうが、嘘の情報や偏向報道を混ぜて世論誘導するのは間違っています。

日本のネットでは「NRAも自分たちの家族が撃たれたら考え方が変わるはず」といった意見が多くみられますが、そもそもNRAは「銃で武装した方が身を守れる」という考え方なので、家族が撃たれようとそのような発想を持つはずがありません。それはナイフで刺されたらナイフを恨むようなもので、凶器より犯罪者を憎むのが彼らの価値観です。
また、マスコミや政治家の常套句に乗ってNRAを諸悪の根源と非難するのは問題の本質から離れています。NRAは500万人の会員に支えられた団体(代表)であり、支持者の代弁をしているに過ぎません。NRAを潰しても、支持者は新しい団体を立ち上げるだけです。ロビー団体はロビー活動が仕事であり、NRAが独断で力を行使しているわけではありません。NRAが気に入らないのであれば、民主国家らしく対抗できるロビー団体を設立すれば良いのです(実際、米民主党を中心にその動きがあります)。

アメリカの銃の問題は根深いものがあり、調べれば調べるほどNRAの考え方は現状で最も現実的だと考えさせられます。アメリカに必要なのは、善人に武装する権利を与え、悪人から銃を取り上げることですが、善人と悪人を区別するのは困難です。ある意味不幸ですが、力には力でしか対抗できない現実があります。アメリカでは市民の武装を憲法が保障し、国の歴史と成り立ちが日本とは全く異なるため、日本の常識で語ることは到底できません。理想を語るのは良い事ですが、現実を無視した実現不可能な理想はただの夢に終わるでしょう。
(※ちなみに、私はNRAの基本方針に同意しますが、NRAという団体を支持しているわけではありません。NRAの主張するバックグラウンドチェックに対する考え方には賛同しかねます)

今回のような乱射事件の殆どは、いわゆるガンフリーゾーン(銃の持ち込みが禁止された場所)で発生しています。無差別に人を殺そうと考える者は、警察署や軍施設を狙うほど馬鹿ではありませんから、娯楽施設、学校、映画館などで非武装弱者をターゲットにします。アメリカではコンシールドキャリー(合法的な武器の隠匿携帯)している人が犯人を制圧したり射殺する事件も起こっていますが、これらは日本では一切報道されないため「武装は無意味」と感じる人が多くても無理はないのかもしれません。しかし、最近では地域によっては教師が銃を携帯する動きがあったり、ガンフリーゾーン自体を廃止するところも増えており、徐々に状況が変化しています。

私の長期予想は、アメリカはバックグラウンドチェックをより厳しくする一方で、銃規制を緩和する方向に向かうと考えています。具体的には、コンシールドキャリーの権利を広く認めるということです。銃を取り上げるのが不可能なら、銃で身を守る方法を取るのは自然で現実的な流れでしょう。
今年、アイダホ州はコンシールドキャリー許可証を廃し、2016年7月1日から21歳以上であれば誰でも許可証無しで銃を携帯できるよう法改正しました。これは「銃購入時にバックグラウンドチェックを終えているので、コンシールドキャリー許可証発行時に再度バックグラウンドチェックするのは不要」と判断したためです。許可不要で銃を携帯することを「コンスティチューショナル・キャリー(Constitutional Carry)」と呼び、現在既に複数の州(モンタナ州、ニューハンプシャー州、ニューメキシコ州、オクラホマ州)で許可不要となっていますが、この流れはひょっとしたら他州にも影響を与えるかもしれません。

最後に、時々「秀吉の刀狩のおかげで日本には銃がない」という人がいますが、これは誤解です。
当時、廃刀令のあとも各村にお触れを出し、村で鉄砲を誰が何丁保有しているか帳簿を提出させ、管理していた史実があります。この帳簿は現存しており、岩堂憲人著「世界銃砲史」にも詳しく書かれています。廃刀令は刀剣類を規制しましたが、銃砲は規制していません。
また、廃藩置県の翌年から各藩が政府に兵器還納を開始しますが、これもよく調べると各藩は還納を渋っており、密かに隠し持つなどして明治政府の思惑通りにならなかったことがわかります。日本で銃が厳しく規制されているのはGHQ以降の話しであり、戦前は民間人でも拳銃を購入可能でした。

GHQに学び、どこかの国がアメリカを占領すればアメリカの銃問題は解決するかもしれませんね?

 

※アサルトウェポンやアメリカの銃規制については、「米国で軍用狙撃銃は所有可能?」や「クイズでわかるアメリカ銃社会」の記事もご覧ください。

 




 
 
 
 
 
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