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トルコ空港爆破テロの現場で確認された銃

6月28日にトルコで発生したアタチュルク国際空港自爆テロ事件では、銃撃と3回の爆発(自爆)による攻撃が行われました。

現在、具体的にどんな武器が使用されたのか明らかになっていないので、今回は現場に残された銃や警察の装備を確認したいと思います。

トルコ空港爆破テロの現場で確認された銃

Photo via dailymail.co.uk

Photo via dailymail.co.uk

空港の床に残された、自爆犯が使用したと思われるAK系ライフル。

特徴的なバーチカルグリップと初期型マズルから判断して、ルーマニア製PM md.63 (AIM)だと思われます。

レシーバー後部のストック固定用パーツを見ると、フォールディングストック用というよりも、固定ストック用レシーバーのようにみえます。イラクやアフガニスタンの動画や画像を見ていると、ストックを排除した固定ストックモデルの不完全なAKをよく目にするので、これも同様の銃かもしれません。

マガジンは2本重ねてテープで固定されています。マガジンポーチなどの装備を持たない兵士が紛争地で行いがちな方法ですが、マガジンが土などに触れたり、ぶつけてマガジンリップにダメージがあるとジャムの原因になりやすく、賢い方法とはいえません。

報道によれば、犯人は銃身を床に打ち付けていたという目撃証言があり、ジャムをクリアするためボルトを閉鎖しようとしていたようです。

セレクターはセミオートの位置になっています。ストックが無いことで速射時のコントロールが難しくなるため、セミオートで慎重にターゲットを狙ったのかもしれません。

こちらの動画はポーランド製AKピストルの射撃です。

動画に登場する人物はかなり撃ち慣れている経験豊富なシューターですが、ストックが無いと命中させにくいのが分かります。

 

ルーマニア製AKの概要

Photo via tworiversarms.com

AIMSとAIM Photo via tworiversarms.com

PM md.63/AIMはロシアのAKM/AKMSを参考に、ルーマニアのクギール工廠でライセンス生産されたAKファミリーのひとつです。PMのPはライフル(Pusca)、Mはマシンガン(Mitralieră)を意味し、英訳すると「オートマチックライフル・モデル1963」となります。

輸出モデルはAI/AIM(固定ストックバージョン)、AIS/AIMS(フォールディングストックバージョン)、AIMR/AIR(軽量サイドフォールディングストックバージョン)と呼ばれますが、一般的にはPM md.63やAI/AIS/AIRよりも、AIM/AIMS/AIMRの名で呼ばれることの方が多いでしょう。

セレクターの刻印はS(セイフティ)、FA(フルオート)、FF(セミオート)と打刻されていますが、輸出モデル(AIM)では、S(セイフティ)、A(フルオート)、R(セミオート)となっているか、またはもっとシンプルに、1(セイフティ)、2(フルオート)、3(セミオート)と打刻されています。

 

戦後、ルーマニア軍ではSKSカービン(モデル56)を採用していましたが、ワルシャワ条約機構結成を機に、ロシアから数千丁のAK-47 III型を輸入し軍に採用されました。そして1960年代からライセンス生産を始め、AKMのIV型プレス加工レシーバーに変更。最初期にはAKMをそのままライセンス生産していましたが、後にフォアエンド下にバーチカルグリップを追加したAIMの製造を開始し、フルオート射撃時にコントロールしやすいデザインに変更されました。

フォアエンドと固定ストックは、ブナ材の合板(ラミネーテッド・ビーチウッド)を削って成形されており、グリップはプラスチック成型です。ラミネーテッドストックは曲げに強く頑丈で、アサルトライフル(特にAK)のストックとしてポピュラーな存在である反面、比較的重いというデメリットがあります。

 

1970年代に開発されたフォールディングストックバージョンのAIMSは、ほぼ垂直のバーチカルグリップを装備することにより、ロシアのAKSで使用されるアンダーフォールディングストックが使用されました。しかし、やがて前方へ傾斜したバーチカルグリップに変更されてからは、アンダーフォールディングストックが使用できなくなり、サイドフォールディング方式を採用するに至ります。

AIMSのサイドフォールディングストック(ワイヤーストック)は「タイプ4」と呼ばれるストックであり、旧東ドイツのAKMS(MPi-KMS)で使用されたことから「イーストジャーマンパターンストック」とも呼ばれます。ストック後部にゴムを埋め込むことにより、折りたたみ時にレシーバーに接触して音を立てるのを防ぎ、レシーバーに傷がつかない工夫がみられます。また、ストックの曲線は折り畳んだ状態でもセレクター操作が可能なように設計されています。このストックは東ドイツやルーマニアの他、イラク、ポーランド、エジプトでも採用されました。

 

AIMR Photo via theakforum.net

AIMR Photo via theakforum.net

AIM、AIMSに続き、三番目に開発されたのがコンパクトバージョンのAIMR(PM md.80)。AIMRのRはルーマニア語の「切り詰める/小さい/減少」を意味する「Redus」の頭文字です。サイドフォールディングストックのバットプレートには両側に穴が開けられ、全長は752mmとコンパクト。フラッシュハイダーやバヨネットラグもなく、この銃で銃剣突撃はできません。取り回しの良さから主に空挺部隊、特殊部隊、車両部隊、砲兵部隊などで採用されました。

AIMはワルシャワ条約機構廃止後のソ連崩壊と共に世界中の政府に売却され、アフリカやアフガニスタンで大きなシェアを持ちます。

現在は同国のROMARM国営工廠で製造されており、ルーマニア軍への供給や海外へ輸出されています。

 

モデル名 輸出モデル名 使用弾薬 特徴
PM md.63 AIM 7.62x39mm AKMのライセンス生産品
固定木製ストックモデル
M md.64 7.62x39mm PM md.63のライトマシンガン(RPK)バージョン
PM md.65 AIMS 7.62x39mm アンダーフォールディングストックのPM md.63
PM md.80 AIMR 7.62x39mm AIMのコンパクトモデル
軽量サイドフォールディングストック
PM md.86 AIM-74 5.45x39mm PM md.65の5.54x39mmバージョン
固定木製ストックモデル
AIMS-74 5.45x39mm PM md.65の5.54x39mmバージョン
サイドフォールディング・ワイヤーストック
PM md.90 AIMS 7.62x39mm サイドフォールディング・ワイヤーストックのPM md.65
PM md.90
カービン
7.62x39mm PM md.90を切り詰めたカービンモデル
サイドフォールディング・ワイヤーストック
フラッシュハイダー付き
M md.93 5.45x39mm PM md.86のライトマシンガン(RPK)バージョン

 

テロ現場のトルコ警察が装備する銃

Photo via dailymail.co.uk

Photo via dailymail.co.uk

AIMS(AIMS-74?)とMKE(MKEK) MP5A3(H&Kのライセンス生産)を装備するトルコ警察。

どれもストックが伸ばされています。

 

Photo via dailymail.co.uk

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トルコ軍ではMPT-76アサルトライフルを採用していますが、この画像はM4A1かHK416のようにみえます。

トルコではこのいずれのライフルも自国でライセンス生産されています。

 

Photo via dailymail.co.uk

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空港入口で警備する警官。

MP5Kを装備しており、これもMKE製ライセンス生産品だと思われます。

MKEではバーストモデルも製造していますが、この画像のMP5Kはセミフルオンリーです。

 

Photo via dailymail.co.uk

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MKE MP5A3を手にした警官。

ストックを伸ばし、いつでも発射可能な臨戦態勢です。

 

アメリカ市場とMKE

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トルコのMKEは15世紀から大砲を製造してきた歴史ある国営企業です。現在MKEが扱う小火器類はH&K製品のライセンス生産が多く、H&K以外ではMG3マシンガンもライセンス生産しています。

2013年からはアメリカのゼニスファイアーアームズ社(Zenith Firearms)が輸入代理店となって、アメリカ民間市場向けにMKE製弾薬を輸入し、2014年にはSHOT SHOWに出店しMKE製小火器を紹介しました。現在はMP5系列のモデルを中心に、アメリカ民間市場で販売されています。

 

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アメリカではZ-5RSピストル(MP5A3)Z-5K/Z-5Pピストル(MP5K)など、セミオートオンリーのライフルやピストルモデルが販売されています。

バーチカルグリップを排除したセミオートのMP5Kピストルは、オリジナルのMP5Kに見慣れていると不自然な印象を受けるかもしれません。

アメリカでは法律上、ピストルのグリップより前方にグリップ類を装着することを禁止しており、バーチカルグリップを装着するにはストックと最低16インチのバレルを備えてライフル化する必要があります。(16インチ未満の場合はショートバレルライフルとして登録が必要)

 

MKE Z-43 P Photo via zenithfirearms.com

MKE Z-43 P Photo via zenithfirearms.com

H&K HK33/HK43/HK93のピストル版ともいうべき製品がMKE Z-43Pです。

こんなに長くても法律上はストックが無ければピストル・・・。

中身はオリジナルと同じローラーロック・ディレードブローバックであり、使用弾薬は5.56mmNATOです。SBR(ショートバレルライフル)として登録するなら、ストックを装着して所有することもできます。今年のSHOT SHOW 2016では、16インチバレル、バイポッド、固定ストックがインストールされたライフルバージョンのZ-43(ほぼHK93)が展示されていました。

ゼニスファイアーアームズが扱うMKE製品にはピカティニーレイルが搭載されており、これは取り外し可能です。このローマウントは長さが十分で使いやすそうですね。私の愛用電動ガン(G3A3)用に欲しくなります。

 

この記事を書いている最中に、今度はバングラディッシュで邦人が巻き込まれる立てこもり事件が発生し、ようやく解決しました。

ニュース映像を見ていると、M4A1、AK-47、AKS、SKS、SVDなどが目につきましたが、ニードルバヨネット付きAK-47(56式)も気になります。

大量のAKやSKSが並び、兵員輸送車の車列もBTR-80なので、なんだか旧ソ連軍の風景を彷彿とさせます。

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