【続】G2R R.I.P.のストッピングパワー

ニュースサイトのDNAが、”「人体破壊専用ピストル弾」実はものすごく大したことないことが判明”との見出しで新弾薬R.I.P.のテスト動画を伝えています。記事の最後で「結果としてDNAも宣伝にノセられてしまった形になります。」と反省の弁が書かれていますが・・・イヤイヤ、このオジサンのレビューだけを信じたらまた失敗するのでは?結論を出すのはまだ早いでしょう。

動画のコメント欄でも痛いところを突かれているツッコミが散見できますし、私はG2R R.I.P.が特別に高性能だとは思いませんが、この人物が批判するポイントはズレていると感じます。「革新的な弾ではない」には同意しますが、.22LRを例にあげるのはR.I.P.のコンセプトから外れて意味不明ですし、バードショットのストッピングパワーが小さいかのような発言は同意しかねます。

まずは簡単に基本から整理したいと思います。

 

ストッピングパワーとは何か?

ストッピングパワー(Stopping Power)とは、人や動物の行動をストップさせる(行動不能にさせる)パワーのこと。対象が死に至るかどうかは問題ではなく、行動不能になるか否かがポイントです。対象の反撃能力を短時間で不能にさせるために、弾頭の運動エネルギーを効率よく体内で消費させることを目的に弾薬メーカーは弾頭形状や初速を設計します。

 

人はなぜ撃たれると死ぬのか?

心理的要因もありますが、主な原因は臓器や神経損傷後の失血です。

人体は脳が制御し、筋肉を動かしています。神経は体中を張り巡っており、弾の着弾で神経断裂など強いダメージを受けると神経を通じて脳がその情報を受け取り、筋肉への指令が遮断されたり意識を失うことがあります。(強い痛みで失神する事例はよくありますね) 筋肉が動かないと姿勢を維持できないので立っていることが困難となり、その場に倒れこむことになるでしょう。動けなければ自ら止血もできません。しかし、ドラッグやアドレナリンの影響で脳や神経が麻痺していたり、神経のダメージが小さいと、このような影響を受けないこともあります。また、脊椎や脳など神経が集中している場所への直撃によるダメージは特に死亡率が高くなるのは言うまでもありません。



ライフル弾のような初速の速い弾の場合では、ハイドロスタティック・ショック(Hydrostatic shock)が発生します。(私はこの正式な日本語名を知らないので、ここでは流体衝撃と呼んでおきます。) これは血液や体液など水分を多く含んだ組織に高速の弾が進入すると、進入箇所から離れた場所まで流体を通じて衝撃が伝わる現象のことです。これにより身体に受けた弾の衝撃で脳が損傷することがあります。

血管には毛細血管から動脈まで様々な太さがありますが、血管が破れて出血が多いほど早期に意識を失ったり死に至ります。出血し血圧が低下すると、脳は低下した血圧を補うために呼吸を早めて心拍数を上昇させます。水の入ったバケツに小さな穴が空いても、流れ出る水より多くの水を継ぎ足せばしばらくは水位を維持できます。しかし、大きな穴を空けたり、小さな穴を多数空けたらバケツの中の水はいずれ無くなります。これと同じように、大小の血管を損傷して失う血液の総量が多くて失血が早いほどストッピングパワーがあり、そうなれば循環性ショックで心肺停止となり、死亡率も高くなるといえるでしょう。直接神経にダメージを与えなくても、失血で血圧が急低下すればドラッグやアドレナリンの影響下でも意識を失い行動不能となります。しかし、失血に至るまでしばらく動けるため、神経系へダメージを与えるより行動不能となるまで時間を要するのが問題となります。

 

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(Photo via health.goo.ne.jp)

 

 

G2R R.I.P.は他のホローポイントとどこが違うのか?

既に触れたことがある話題ですが、一般的なホローポイント弾は、着弾時に弾頭先端が展開拡張することでより大きな瞬間空洞(Temporary cavity)と永久空洞(Permanent Cavity)を作り臓器にダメージを与えます。また同時に、弾頭が持つ全ての運動エネルギーを体内で消費します。大抵非貫通ですが、大きな穴を身体の奥の方まで空けることで内臓にダメージを与え、射入口から弾の到達点までの間の周辺で出血させます。

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(Photo via www.ar15.com)

 

一方、G2R R.I.P.は侵入から5~10センチで破片が周囲に散乱し、残された弾頭の後端が深いところまで到達します。一般的に、弾が骨に命中すると骨が粉砕されたり穴が空きます。骨の破片が臓器を損傷して出血が酷くなることがありますが、R.I.P.が発生させる破片はこれと似た効果を生む可能性が考えられます。しかし、発生する空洞は一般的なホローポイントより小さいので、臓器に対する衝撃は比較的小さいと想像できます。

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(Photo via g2rip.com)

 

破片を撒き散らす弾といえば、散弾を内包したセイフティ・スラグが思い出されますが、散弾は着弾後に進行方向へ向かって進みますが、R.I.P.は意図的に角度をつけて侵入後に比較的浅い場所で周囲に散るように設計されています。しかも破片は散弾より大きい。

 

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セイフティ・スラグ (Photo via www.shootingillustrated.com)

 

大口径でなくても、小口径の弾を複数受けたり、バードショットで撃たれると神経が受けるダメージが広範囲となり、同時に血管の損傷箇所も多くなるため有効なストッピングパワーが期待できますが、R.I.P.はこうした効果を狙ったもので、一般的なホローポイントとは異なる思想が見えてきます。「深くて大きな穴を空ける」か、「広範囲に肉を切り刻む」か・・・。

DNAのサイトで紹介された動画のレビューは、こうした出血や神経への総合的なダメージを考慮していないように思えます。弾が到達する深さだけが重要ならFMJで十分なハズですが、実際はそうではありません。

 

・・・で、結局のところG2R R.I.P.は性能が良いのか悪いのか?

情報を掻き集めていくつもレビューを見たあとで出した個人的結論ですが、他のホローポイントと大きな差は無いと考えています。海外のフォーラムでは発表以来大きな話題を呼び議論となっていますが、意見は割れています。「革新的な弾」と持ち上げられたり、常識外れのプレミア価格で1箱300ドルで売る人間もいたりで、そうした現象に対して不満を持つ人は多いようです。

まだこの弾で撃たれた人間が居ないので、実際に効果があるかは想像するしかありません。運動エネルギーが全て消費されているので、エネルギーを人体に伝えられているのは間違いないでしょう。貫通力を見ても、ヘッドショットで脳幹に到達できる能力はあるようです。バリスティック・ゼラチンによるテストはある程度参考になりますが、人体は骨や空洞や密度の高い細胞組織などで構成されており内部の状態が一定ではないので、出血や神経に対する影響は未知数です。しかし、「大したことがない弾」と結論付けるのは間違った分析ではないでしょうか。

 




 
 
 
 
 
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